【これを読みなさい】物語の前振りと意外性の作り方
こんにちは。浅岡家山です。
物語の前振りと意外性って聞いたことがあるけれど、作り方がわからず、ネットで調べてもいまいちわからなかったという経験ってありませんか? 私なりのやり方を紹介します。この記事を最後まで読んだら、きっと前振りと意外性を、簡単に作ることができるようになりますよ。
目次
物語の前振りとは何か?
前振りというのは、事件が起きる前にわざと平和なシーンを描き、そこから事件を起こして180度の変化を見せることで、読み手を驚かす方法です。
たとえば右を見せておいて、いきなり左を見せる。
たとえば晴天で気持ちの良いシーンの後、どしゃぶりの雨のシーンにする。
たとえば、平和でのどかなシーンを書いておいて、いきなり事件を起こす。
誤誘導に少し似てますが、読み手を、あさっての方向に意識させておいて、
実はこっちと見せるテクニックです。
予想外なことが起きるので、読み手は、ハラハラドキドキするわけです。
たとえば山本周五郎の『さぶ』という作品では、もっこ部屋に義一という男がいて、もっこ部屋で禁止されている賭博をしています。でも、役人まで仲間にしているので、誰も訴えることができません。そして、義一は、主人公の栄二を目の敵にしていて、いつ争いが起きてもおかしくない状況です。
ですが、栄二は、挑発にのらずに、静かに生活しています。そんなとき、栄二の友人の万吉が、栄二に、義一を襲う相談をします。栄二は、はやまるな、役人に相談しようと言って諫めます。役人の中にもきっと、助けになってくれる人はいるだろう。無駄かもしれないが、とにかく岡安という役人に相談することにし、とりあえずもっこ部屋に帰ってきます。すると、突然、義一たちが栄二に喧嘩をふっかけ、栄二は、本能的に動き、義一たちをぶちのめし、血だらけにして倒します。
これは、役人に相談して、おだやかに対処しようとした矢先、義一との戦いが起きたわけです。読み手は、あまりの急展開に驚きます。これが前ふりの効果です。
Aをしようと考えていたら、Bの事件が起きて、Aがふっとぶ。読み手は意外性に、びっくりするわけです。
文章量としては、前振りには最低、3行は、書いて下さい。大きいものになると、3、4ページぐらいあってもかまいません。できるだけ、読み手に、違う方向を見せておいて、意識が完全にそっちにいったなと思ったら、どん! と反対方向を見せる。これが、前振りのテクニックです。
参考文献 『さぶ』 山本周五郎 山本周五郎長篇小説全集第三巻 新潮社 2013-07-26
物語の前振りの作り方
前振りの作り方を解説します。以下の手順になります。
1,真相や真実などの見せたいものは何かを決めます。
2,つぎに、真相とは真逆なものや、あさっての方向を決めます。
3,1と2を物語に落とし込みます。最初に、読み手に2を見せます。そして読み手の意識が2に集中しているのを見計らって、1を見せます。読み手は驚きます。
○実際に前振りを作ってみます。
1,まず、見せたいものを決めます。ここでは、息子が事故で死んだ、ことにします。
2,つぎに、真相とは真逆なものを決めます。ここでは、朝、息子に、学校から帰ってきたら誕生日のお祝いをしようねと伝えると息子がよ元気に学校へ行った、ことにします。
3,1と2を物語に落とし込みます。最初に、息子が学校へ行くために靴を穿いている場面を書きます。明るい顔で、学校に行くのが楽しいという顔つきを書きます。帰ってきたら、誕生日のお祝いをしようねと母親が言います。息子は嬉しそうに笑いながら、元気に「行ってきます!」と言って、外に飛び出します。すこし時間が経って、電話がかかってきます。息子が車にはねられたから病院にくるようにという電話です。主人公は病院へいきますが、息子は亡くなっていました。
こんな感じです。どうでしょうか? 急展開に驚くと思います。
どういう時に前振りを使うといいかというと、急展開させて盛り上げたいときですね。そのままでも十分盛り上がるが、劇的にするために、より強調するために前振りを使います。
物語の意外性とは何か?
私は意外性こそ、物語の醍醐味であり、面白さの源泉だと思っています。謎も、誤誘導も前振りも、伏線も起承転結も、全ては意外性のためにあると思います。
よく練られた意外性は、読み手の予想を覆し、驚きと面白さを与えます。
たとえば、山本周五郎の『柳橋物語』では、冒頭で庄吉がおせんに、俺は大阪に行って、腕を磨き棟梁の株を買えるだけの金をつかんで帰ってくる。それまで嫁にいかずに、待っていてくれないかと言います。おせんは、待ってるわと答えます。おせんと庄吉の願望を表明します。
私はここで純愛物語だと予測しました。庄吉とおせんは、何があっても耐え抜き、苦労を乗り越えて純愛を貫くのだろうなと思いました。
その後、おせんの気持ちを試すかのように幸太に言い寄られたり、父親が病気になったりと苦境に立たされます。でも、おせんはじっと耐えながら、庄吉を待ちます。
私はここらへんで、やっぱり純愛の物語なんだと思いました。
その後、話は続き大火事が起こり、幸太がおせんを助けるために、身をていして守り、そして亡くなります。おせんは父や幸太の死、大火事のショックで一時的に、痴呆のようになり火事で出会った見知らぬ赤ん坊を育てることになります。そして、ほそぼそと暮らしていると庄吉が帰ってきます。しかし赤ん坊を見て、幸太との子供だと勘違いし誤解がとけぬまま、庄吉は他の女性と祝言をあげます。
私はそれでもきっとおせんと庄吉が結ばれる物語だと予測してました(普通の感覚とは違うかもしれませんが)
おせんは悲しみを抱えながら、赤ん坊を育てるために商売を始めます。ある日誤解だったことに気づいた庄吉が会いに来ます。おせんは言います。「あの子は幸太さんとあたしのあいだに出来た子だわ」と言います。そして、”「これでいいわね。これでようやく、はっきり幸太さんとご夫婦になったような気持ちよ」”そう言って、物語は終わります。
私は仰天しました。自分の予測を見事に裏切られました。面白い! と感じました。意外性とはこういう形で読み手の予想を裏切るものです。
参考文献・引用文献 『柳橋物語』 山本周五郎 山本周五郎長篇小説全集第五巻p183 新潮社 2013-09-27
物語の意外性の作り方
意外性を作るためにはどうしたらいいか説明します。
意外性は読み手が自分の予測していないことが起きたときに感じます。予測を裏切られたということです。では、予測は何からできているかというと、 予測は経験からできています。
たとえば自動車学校でシミュレーター教習があります。シミュレーターの画面で、車を運転していると急に人が道路に飛び出して来て、危険な目に遭います。その経験から実際に車を運転した時、危険を察知してスピードを落とすなど、危険を予測した運転ができるようになります。
このように、人間は経験から予測をします。
人間は様々な物語を読んだり、テレビのドラマを見た経験により、作品の予測をします。だからこそ予測を覆すもの、思いもよらないもの、経験したことのないものには意外性を感じます。
ということは新鮮味のあるものは意外性があると考えられます。新鮮味とは、新鮮さがある、独創的であるという意味です。
作品に新鮮味を加えればいいわけです。そのためにひとつの素材を他人が思いつかない角度から見て、ネタにするといいと思います。
また、私なりに思いついた方法を書いていきます。以下の手順になります。
1,たとえばストーリーで、新鮮味を加えたいのなら、今、自分でできる範囲で、可能な限りテンプレのストーリーを集めます。王道でも邪道でも何でもいいので、誰でも知っているストーリーを、どんどんメモします。
2,1で出したテンプレのストーリーを見ながら、ここに書かれていないものはないかと考えます。時には、マインドマップなどの発想法を使って考えます。
テンプレは既に誰もが知っていることなので、そのまま使っても新鮮味はありません。でも、テンプレを集めたことで、今、現在、自分ができる最先端の場所にいることになります。ここから工夫したことは自分の成果になります。そのテンプレを眺めつつまだ開発されていないところはないかを考えて、工夫します。
たとえば、ストーリーのここを変えたらどうかとか、脇役の性格を変えてみるとか、とにかく工夫をします。工夫した分だけテンプレを越えた新鮮味のある、意外性のあるストーリーができます。
他にも方法はあります。
たとえば、今の十倍の質のものを作るにはどうしたらいいかを考えるのもいいです。あえて、高い目標を立てると今のやり方では無理なので、今までにないストーリーを考えないといけなくなります。よって新鮮味のある、予測のつかないストーリーができます。
また自分の体験を調べるのもいいでしょう。人間は自分の体験は平凡でみんなも体験していることだと思いがちですが、そんなことはなく普段の生活のなかにも特別な体験はあります。
たとえばマンションの部屋を開けるために、数字の暗号ボタンを押すことでロックを解除するシステムがあります。この暗号は部外者はわからないものですが、同じ数字を繰り返し押すことで、だんだん塗装が落ちてきて、どのボタンが押されているかわかります。それを利用して犯罪をする人もいるでしょう。
こういった特定の人しか知らないことは数多く存在します。自分では何でもないことでも、他人から見れば特殊で思わず唸ってしまうものです。そういうのも意外性を作る上で役立ちます。
また他人がどのように読んでいるかを想像しながら文章を書くのもいいでしょう。読者を想定してその人に届くように考えたり、驚かせるために工夫をするとか。
読者を想定して読者は何を感じているかを考えながら文章を書いていけば読者の感情をコントロールすることも可能になります。読者目線を意識して読者の予想を裏切り期待に応えるように物語を作ることで読者を満足させることができるようになるでしょう。
以上が意外性のあるものを作る方法です。よければ参考にしてみて下さい。
まとめ
1,物語の前振りとは、180度の変化を起こすことで、読み手を驚かす方法です。
2,物語の前振りの作り方とは、真逆なものを見せることです。
3,物語の意外性とは読み手の予想を裏切るもの。
4,物語の意外性の作り方とはテンプレを参考にしつつ、新鮮味のあるものを工夫すること。
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最後まで読んでいただきありがとうございました。