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この記事を読めば物語の伏線を張ると回収が簡単に作れます! こんなにわかりやすすぎる説明があるのか! マジか!

2023/09/21
 
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 私はKindle作家の浅岡家山といいます!  このブログでは『やさしさ』や『物語技法』『Kindle本』などの皆様に役立つ知恵を、色々な形で発信していきます。
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伏線がうまくいかずに困っている人へ

伏線を簡単に作る方法を知りたくないですか?

このブログ記事を読めば、伏線を簡単に作れるようになります!

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このブログ記事では伏線表裏複眼法をとおして伏線の作り方を解説します。

物語を書いていて伏線を張りたいけどどうしたらいいかわからないとか、プロの作品を読んでこんな伏線どうやって作ったんだ? と悩んだりしていませんか

伏線を作るのは簡単です。ちょっとしたコツがわかれば誰でも出来ます。そのコツとは『伏線表裏複眼法』です。『伏線表裏複眼法』が理解できれば簡単に伏線を作ることが出来るようになります。

少し解説すると伏線表裏複眼法とは物事が多面性に出来ていることに注目して特徴を見つけ出すことで伏線を作る方法です。

以下で解説していきます。

『伏線表裏複眼法』を理解するためにまず伏線はどういう効果があるのかを説明していきます。

目次

伏線は、どういう効果があるか?

まず伏線とは何かについて考えてみましょう。

伏線は前に書いてあったエピソードが、後ろの方で実はこういう側面がありますよと伝える物語技法です。

例えば山本周五郎の『さぶ』(『さぶ』のネタバレを含みます)という小説で主人公の栄二は奉公先の帳場のお金を盗み、女将さんから叱られます。栄二は逃げ出したいと思いますが家族が亡くなっているためどこにも行き場がありません。そして恥をしのんでその仕事を続けます。

栄二はだんだん仕事を覚えて力もついていき、親方から信頼されるようになります。そして親方から初めて仕事をまかされます。ところが突然その仕事から外されます。

狼狽した栄二は兄弟子のところへ行って事情を話すと兄弟子から仕事場から貴重品の金襴の切れがなくなったことを知ります。

親方は半信半疑だったのですが栄二が帳場で銭を盗んだ過去があったためまたやったのだと栄二が犯人だと決めつけて仕事から外したことがわかります。栄二の過去の過ちが今になって疑いとして自分の身に降りかかってきたのです。

このように前に書いておいたことが後半で意外な形で出てきてあれはそういうことだったのかと思わせる技法が伏線です。

伏線はこのように前後が意外性でつながるため、時空を越えて共通点がわかり読み手に面白いと思わせる技法です。そして単調なストーリーに意外性をもたらせます。

また都合が良すぎる展開のストーリーでも伏線を張ることで現実味を増やし、そういうこともありえると説き伏せる効果があります。

そのまま出て来るとあり得ないと思える出来事も伏線を張ることでありえると腑に落ちるのです。

ご都合主義を回避する技法です。

伏線の作り方 伏線表裏複眼法について

ここからは伏線表裏複眼法の説明をしていきます。

物事には表面と裏面があります。

たとえば一冊の本があるとします。一般的に本の表紙には本の題名や作者の名前が書いてあります。そして本の裏面を見ると、バーコードや本の値段が書いてあります。

一冊の本でも、表面から見た場合と裏面から見た場合では違う印象を受けます。

伏線もこれと同じです。

ストーリーの前半に張る伏線と、後半に回収する伏線では、同じ事柄を書いてあるのに違う印象を受けます。

たとえば前記した『さぶ』でいえば前半では栄二が帳場から銭を盗んだ話で後半では仕事場から金襴の切れがなくなったということになります。

同じように貴重品がなくなったという出来事ですが前半と後半ではずいぶん印象が違います。この印象の違いから伏線を作るのが伏線表裏複眼法です。

 伏線表裏複眼法とは共通点を表面から見たり、裏面から見たりして複眼的に見ながら違う印象を受ける特性を利用した伏線の作り方です。

少しわかりにくいかもしれないので具体例を出して説明します。

たとえば飴玉があるとして飴玉の特徴を出します。ぱっと思い浮かぶものは、甘い、美味しい、固い、虫歯になる、蜜でできている、などです。

飴玉で伏線を作るとすれば伏線の表面として甘いことを書いて、伏線の裏面として、虫歯になることを書きます。すると飴玉の特徴の違いから、違った印象を受ける伏線ができました。この工程が伏線を作る工程です。

詳しく書けば、

1,伏線にするものを決める(飴玉)

2,伏線にするものの特徴を出す(甘い、固い、虫歯になるなど)

3,伏線の表面と裏面のそれぞれのエピソードを決める(表面が飴玉が甘くて美味しいというエピソード、裏面が飴玉を食べ続けたせいで虫歯になってしまったというエピソード)

4,ストーリーの前半で表面の「飴玉は甘くて美味しい」という内容のエピソードで伏線を張る。ストーリーの後半で裏面の「飴玉を食べ続けたせいで虫歯になった」という内容のエピソードで伏線の回収をする。

同じ飴玉でも見せ方の違いから読み手に違う印象を与えます。この場合、最初は飴玉は甘いと見せておいて、後半で飴玉のせいで虫歯になったと書けば飴玉という共通点から伏線を張ると回収が完成します。

このように伏線の表面と裏面の印象の違いから、伏線を作る方法が伏線表裏複眼法です。

もう1つ具体例を出しましょう。たとえば「一緒の墓に入ろう」という発言の伏線を作ります。

1,伏線にするものを決める(「一緒の墓に入ろう」という発言)

2,伏線にするものの特徴を出す(プロポーズの言葉、終活の言葉、冗談、墓を買うときに言う、愛人を口説くときに言う、ストーカーの殺害予告など)

3,伏線の表面と裏面のエピソードを決める(表面が恋人に向かってプロポーズを言うというエピソード、裏面が主人公がストーカーになって言う殺害予告のエピソード)

4,ストーリーの前半で表面の「一緒の墓に入ろう」と恋人にプロポーズする伏線を張る。その後、恋人から断られて主人公はストーカーになってしまう。

ストーリーの後半で、伏線の裏面の伏線の回収をする。ストーカーになってしまった主人公が「一緒の墓に入ろう」と言って、恋人を殺し自分も死ぬ。

どうでしょうか。同じ「一緒の墓に入ろう」という言葉でも、プロポーズと殺害予告では雲泥の差がありますが、読み手は共通点から意外性や面白さを感じると思います。

こんな感じで伏線にするものの特徴を出して、伏線の表面と裏面に配置して下さい。表面が伏線を張るにあたり、裏面が伏線の回収にあたります。

伏線の数について

作品の中でいくつぐらい伏線があるといいかその目安を調べてみました。

たとえば長篇小説の『さぶ』の伏線を数えたのですが、だいたい40個の伏線がありました。そして同じ伏線を何度も使い回す演出がありました。全ての合計は122でした。

つまり長篇の物語での伏線の目安は、伏線を張ると回収のセットを40個用意して、それを張ったり使い回したり回収するようにして合計120ぐらいです。

短篇小説の場合ではたとえば山本周五郎の『梅咲きぬ』では伏線は8個でした。使い回す演出を合計すると20個でした。

つまり短篇の物語の場合は伏線の目安は、伏線を張ると回収のセットを8個あらかじめ用意し、伏線を張ったり使い回したり回収して合計20ぐらいでした。

伏線を使い回すとは

 伏線を使い回すとは一つの話題を何度も登場させて、伏線を張ると回収を繰り返すことです。

例えば山本周五郎の『さぶ』では栄二とさぶが、おのぶと初めて出会ったときに、おのぶの姉が近くの店に勤めている話をします。

数年後、再会したときにおのぶに姉がいたということが話題になります。そして悲しい死に方をしたからその話はしないでとおのぶに言われます。

その後、栄二が苦境に陥った時、おのぶは、姉は身売りされそうになり、好きな男と心中をして亡くなったという話をします。

つまり、

姉が近くの店に勤めていると話す →姉が悲しい死に方をしたと話す →姉は身売りされそうになり、好きな男と心中して亡くなったと話す

このようにおのぶの姉という話題を何度も出して伏線を張ると回収を繰り返すことを使い回すと言います。

伏線を作るためのチェックリスト

いきなり伏線になるものを出しなさいと言ってもすぐには思いつかないものです。

そこで、私が過去に『さぶ』を分析してわかった伏線になったものやその特徴を、紹介します。ただ、そのままだと『さぶ』の真似になってしまうので、抽象的な言葉に変えてあります。

伏線を作る際のチャックリストとして、その言葉から思いつくものを伏線にして下さい。

○伏線になるものは「物品、行動、人物、家族、欠点、発言、癖、体の変化、願望、病気、比喩、噂話、特技、場所、生い立ち、特徴、過ち、仕事、言葉、謎、顔や身体、目標、物、病気、恋愛、相談」

○伏線の特徴は「 親切、行動、感情、思考、過去、行動の意味、感謝、謝罪、人間の変化、体の変化、状況の変化、再会、事件の手がかり、性格、矛盾、嘘と真実、羨望、対比した場所」

参考文献『さぶ』山本周五郎(2013) 山本周五郎長篇小説全集 第三巻 新潮社

具体的な伏線を張ると回収の作り方

全ての説明が終りましたので改めて全体のまとめとして伏線表裏複眼法による伏線を張ると回収を作ってみましょう。手順を以下に書いていきます。

1,伏線にするものを決める→チェックリストの伏線になるものから選ぶ。ここでは、物品にします。物品から思い浮かぶものとして、欠けたコップにしましょう。

2,伏線にするものの特徴を出す→チェックリストの伏線の特徴から嘘と真実にします。欠けたコップの嘘と真実とは何かを考えます。たとえば、コップが欠けたと嘘をついたとか、コップは欠けてないという嘘とか、お母さんのコップを欠けてしまったという真実とか、本当はお兄さんがコップを欠けさせたという真実とか。

3,伏線の表面と裏面のそれぞれのエピソードを決める(表面が主人公がお母さんのコップを欠けさせてしまったと嘘をつくエピソード、裏面が本当はお兄さんがコップを欠けさせてしまったというエピソード)

4,物語の前半で主人公がお母さんのコップを欠けさせてしまったと嘘をつき、お母さんから怒られる。後半で、でも本当はお兄さんがコップを欠けさせていたと真実が判明し、それだけ主人公はお兄さんのことが好きなのだとわかる。このように伏線を張ると回収を実際の作品に配置して終わりです。

こんな感じで欠けたコップという共通点から伏線を張ると回収が完成しました。伏線は簡単に作れますのでぜひ行なってみて下さい。

伏線表裏複眼法による伏線を作る手順

以下に伏線を作る手順を載せておきますので参考にしてみて下さい。

1,伏線にするものを決める→チェックリストの伏線になるものから選び、思いつくものをあげていく。

2,伏線にするものの特徴を出す→チェックリストの伏線の特徴から選び、1で思いついたものと組み合わせて、思いつくものをあげていく。

3,伏線の表面と裏面のそれぞれのエピソードを決める。2で出た特徴を、表面(伏線を張る)と裏面(伏線の回収)に配置する。

4,実際の作品に表面と裏面を配置して終わり

まとめ

1,伏線は簡単に作れる。

2,伏線はご都合主義を回避し、面白いと思わせる技法です。

3,表面と裏面の印象の違いから伏線を作る伏線表裏複眼法

4,伏線の数は長編で40個、短編で8個。

5,何度も登場させて伏線を使い回す。

6,伏線を具体的に考えるときにはチェックリストを使う。

7,具体的な伏線を張ると回収の仕方について

8,伏線表裏複眼法による伏線を作る手順

9,伏線を学ぶのに良い本の紹介。『さぶ』

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最後まで読んでいただきありがとうございました。

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